今回のテーマはほしいも。土壌がさつまいもの栽培に適していたこと、農家や漁師たちの副業として最適だったことなどから、ほしいもの生産は茨城県各地で盛んになりました。戦前・戦中は保存食として重宝されていましたが、近年は健康食品として注目されています。時代が変化しても茨城の特産品として根付いているほしいも、今では国内90%以上という圧倒的なシェアを誇っています。そのヒストリーを紐解くと、各時代でさまざまな工夫をしてきたことがわかりました。

“ほしいも”は、サツマイモを天日干しすることで日持ちを可能にした茨城県を代表する特産品です。江戸時代に現在の静岡県で誕生し、明治時代後半に茨城県に伝わり保存食として広まりました。サツマイモは水はけの良い砂地を含んだ土壌で良く育ちます。名前の通り薩摩(現・鹿児島県)が主な生産地ですが、茨城の土壌も育成に適していました。とくに那珂湊(ひたちなか市)では、農家や漁師たちの副業としてほしいも作りが盛んになり、戦時中は軍隊の野戦食として需要を伸ばしました。その那珂湊で明治30年に創業したのが大丸屋。茨城のほしいもと共に歩んできた老舗です。写真は昭和6年のときの出荷風景。前方にトラック、後方に馬車が写っており当時の様子が伝わってきます。大丸屋はこの頃から北海道にも販路を拡大。その経緯もあり、北海道では茨城のほしいもを食べる習慣が根付いています。

茨城ほしいもの歴史を感じる一枚

最近は健康食品としても注目!!

戦時中は保存食として重宝されたほしいもは、現在では健康食品として知られるようになりました。そもそもサツマイモにはビタミンE・ビタミンB群・カリウム・食物繊維・鉄など体に良いものがたくさん含まれています。とくにカリウムは高血圧を防ぎ、食物繊維は腸内環境を整えてくれます。その一方でほしいもは、通常のサツマイモよりもカロリーが高くなっていますが、「ダイエットに効果的」と言われています。それは体調が崩れやすくストレスのたまりやすいダイエット中でも、糖分を補給し体調を整えるのに最適な食品だからです。忙しいときでも手軽に食べられるとあって、若い人にも人気。そのまま食べてもおいしいですし、熱を加えるとさらにやわらかくなります。こたつでほしいもを食べるのは、まさに茨城の冬の風物詩です。

手前にあるのは「百年ほしいも焼酎」と「おいもジェラート」。「ほしいもの可能性を広げていきたい」と話す大丸屋専務の大曽根一毅さん。

茨城のほしいもがここまで大きな発展を遂げたのは、各時代で独自の工夫を続けてきたからです。そのひとつが品種の豊富さ。最もポピュラーな「玉豊(たまゆたか)」に加え、茨城生まれで柔らかく甘みが強い「いずみ」、繊維が少なく柔らかく仕上がる「玉乙女(たまおとめ)」、新品種の「ほしキラリ」など、その数は10種類以上に及びます。また、約60ヘクタールの農地で無農薬栽培を行っている「てるぬまかついち商店」(東海村)のように、独自のほしいも栽培を行っている生産者もいます。さらに、商品の充実度も他県を圧倒しています。大丸屋では50点以上のほしいも商品を製造・販売。なかでも、最近は「おいもジェラート」が大人気。添加物を加えずに自然な甘味が特徴で、ご当地スイーツとしても話題になっています。

 

このサツマイモは玉豊。原料イモの代表的な品種です。

専用のスチーマーで蒸された原料イモがコンテナいっぱいに届きます。

専用のナイフで皮をむきます。切るのではなく削ぐのがポイント。

ピアノ線を等間隔にはった専用のスライサーを通して均一の厚みにカットします。

スライスしたサツマイモを一枚ずつ専用の網の上に並べていきます。

約1週間かけて天日干しをします。

大丸屋では「ほしいも作り体験」ができます。
1,560円(※1週間前までに要予約)