JR下館駅前のメインストリート・稲荷町通りに、戦後間もなく、上野勇さんが「上野菓子店」を開業しました。この店が「湖月庵」の前身です。その父に命じられ、15歳で東京へ和菓子職人の修行に出た2代目・浩正さん。7年後、修行先ののれんを分けてもらい「湖月庵」として同地で新たなスタートを切りました。今ではその名を知らぬ人がいない茨城の銘菓「館最中」が誕生したのは、それから10年後。同社にとって待ちに待ったヒット商品でした。今は社長を息子の貴則さんに譲り、会長職に退いた浩正さん。一つひとつ手作りすることへのこだわりは終始変わらず、菓子作りの現場ではまだまだ腕をふるっています。

 

いっぺえどらができるまで!

パーティー用に作ってみたら

社長・貴則さんのアイデアから生まれたのが現在同社いち押しの「いっぺえどら」です。その名の通り、大きなどら焼きの中に、ちょっと小ぶりなどら焼きがいっぱい並んで入っています。貴則さんが、友人の結婚式の2次会を盛り上げようと、ウエディングケーキならぬ、ウエディングどら焼きを作って持っていったのが最初です。

面白い!手軽!で大うけ

これが大うけでした。60個のどら焼きが入った直径約50cmの大どら焼き。上には結婚おめでとうのメッセージをホワイトチョコでデコレイトしました。大きなどら焼きの造形そのものの楽しさに加え、ケーキのように切り分ける手間がいらず、各々が自由に取って食べられる手軽さもパーティーの席では便利でした。

どら焼きのおいしさは折り紙つき

同店のどら焼きのおいしさは折り紙つきです。大納言小豆を煮詰め、練り上げたあんは絶品。平成10年には第23回全国菓子大博覧会で技術優秀賞を獲得しています。10人前から60人前が目安ですが、注文に合わせて個数も調整可。大きな皮は、そのまま食べてもおいしいし、牛乳に浸すなどすれば、また別の味わいを楽しめます。

 

卵、砂糖を混ぜ、小麦粉を入れます。重曹入りの水を足しながら、ねばりが出ないようさっくりまぜます。

まず大どらの皮を2枚焼きます。生地の表面が泡立ってきたら火が通ってきた証拠。手早く返します。

中のどら焼きの皮を焼きます。大きな皮とは違い、数10秒で、ひっくり返し、鉄板の上から移動させます。

皮の粗熱が取れたら、あんを入れていきます。2枚の皮を指にはさみ、あんの量はほとんど勘でピッタリ!

大きなどら焼きの皮の上に、あんの入った小さなどら焼きを並べていきます。作る側も楽しい瞬間です。

ホワイトチョコレートでデコレーションサービス。注文に沿った文字を入れますが、今回は「絶品いばらき」。

 

ここが匠の技!

湖月庵の最初の10年は苦労の連続でした。東京仕込みの都会的なまんじゅうは、当時の基準からすれば「小さい」「甘さが足りない」と、なかなか受け入れてもらえなかったのです。しかし頑固な浩正さんは、自らのお菓子作りを変えようとはしません。そんな中やっと生まれたヒット商品が「館最中」でした。重量感のある四角形が新鮮だったこと。あんのおいしさに加え、甘さのバランスのために、食感のよい求肥を入れたことも消費者の心をつかみました。「下館にはないものを作ろう」という熱意が実った結果でした。

和菓子の今について語り始めたら話は止まりません。たとえば、香りが良かったり、殺菌作用があったため、昔から和菓子の一部に使われてきた葉っぱ類。「自然の葉っぱにキズや欠けがあってもいいと思うんだが…」。今はそうはいかず、結局、ビニールなどの作り物になってしまう。「情けないなあ」「残念だなあ」と本物が使いにくくなる難しい時代を嘆く浩正さん。とはいえひとたび工場でお菓子作りを始めるとイキイキと楽しそうです。

 

和菓子処 湖月庵

詰め合わせ「風の里」(4種20個入、3,440円)です。左から、カステラ風にふわっと焼き上げた懐かしい味わいの「つくば路」(第21回全国菓子大博覧会名誉会長賞)、北海道十勝産の小豆と最中の皮の香ばしい香りが口の中で広がる湖月庵のエース「館最中」(第19回全国菓子大博覧会名誉大賞)、沖縄産の黒糖がつぶあんに溶け込んだものと、白あんの中にマロングラッセが入ったものの2種類ある「やかた最中」、やわらかいチーズをあんで包み、焼き上げた「やかた(チーズ)」。

Information

和菓子処 湖月庵
住所 茨城県筑西市稲荷町丙202-13
お問い合わせ TEL:0296-22-2513
営業時間 8:30~18:30
定休日 火曜日
和菓子処 湖月庵