茨城県の名峰「筑波山」の西側に位置する筑西市。稲が黄金に輝き始めた田んぼに囲まれた静かな田園地帯に、新井製麺所はあります。強いコシと独特な滑らかな舌触りで、県内外に熱烈なファンがいることで知られる「手延饂飩(てのべうどん)」のふる里です。原料の小麦粉は100%茨城県産を使用し、「茨城うまいもんどころ」の認証も受けています。麺の製法は様々あるとしても、「手延べ」の技術を有するのは、関東では数社のみ。とはいえ、同社が自社製品ブランド化を成功させるまでの道のりは、決して平坦ではありませんでした。

 

手延饂飩ができるまで!

機械化、受託生産からスタート

昭和21年に父・友三さんが始めた製麺所を、現社長・新井一江さんが引き継いだのは昭和54年。20代前半の若さでした。当時の流れがそうであったように、機械化を進め、大量生産で大手製麺メーカーの受託生産を請け負っていました。朝から晩まで規格通りの麺を作り続ける仕事に、疑問を感じ始めたのは15年が経過した頃。

「小さな会社が夢を持つ」

バブルがはじけ、納入価格は下がり続け、価格決定権が製造者サイドにない理不尽さもさることながら、メーカーの要求のままに作る「つまらなさ」が抑えようもないものになっていました。「小さな会社が、夢を持ちたいと考えた」とき、突破口はただ一つ、企業のアイデンティティとなるブランド商品を作り、自社製品で勝負するということでした。

追い風が吹いてきた

茨城県産の小麦粉を使うことは、ブランド戦術として重要でした。地産地消の一角を担うことで行政や関連機関のバックアップが得られ、道の駅、JAの直売所などに商品を置くことができたからです。販路を持たなかった同社は、まずはここから始めの一歩を踏み出しました。「渦の中心に入ると、追い風が吹いてくる」。当時の新井さんの実感です。

 

こね作業。小麦粉に適量の食塩水を加え練ります。

生地を2時間ほど寝かせせ、ローラーをかけて板状に延ばします。

機械でまるめながら紐状になった生地をたらいに巻き取ります。

かけ巻作業(八の字がけ)。よりをかけながら、2本の棒に巻取ります。

熟成。熟成箱に入れこの状態でさらに2時間ほど熟成させます。

小引き作業。棒の片方を引っ掛け、60センチほどまで延ばします。

大引き作業。さらに120〜180センチほどまで延ばし、麺がくっつかないように箸でさばきます。

乾燥作業。温度、湿度に注意を払いながら、3日間かけてゆっくり乾燥させます。

 

ここが匠の技!

練りに練り、こねにこねた生地を紐状にし、最後は人間の手で延ばして、一本一本麺にする「手延べ」。独特のコシやツヤは、グルテンを十分に引き出した生地を、引っ張って延ばす過程で生まれます。この技術の習得には7、8年かかりました。三輪、小豆島、揖保乃糸の生産地などに出かけては、少しずつ製法を学びました。肝心な温度、湿度、水分、塩分の調整、熟成時間の見極めなどは、失敗を重ねながら…。必要な感覚を身に着けていきました。「手延べ」の成功で、同社製品全般の認知度を上げ、自社製品による直売方式を確立することができたのです。

乾麺工場、生ゆで工場、手延べ工房、レストランと4部門ありますが、手延べはまだ総売り上げの20%です。目標はもちろん100%。機械の50分の1しか生産できない「手延べ」にこだわるのは、もちろん商品としての自信と、「小が大に勝つ」には、商品の差別化しかないという揺るぎない信念があるからです。

 

新井製麺所 アラカルト

写真上が 手延饂飩。なんと36センチの長さです。半なまのつくば手なえうどん、筑波そばは茨城県産の秋そばを使っています。麺の表面にねじれがみえるひら織はよじってあり、そのせいでスープの絡みがよく、ゆで時間も短縮されています。国府田むぎなわひやむぎも同じく、よじったタイプです。
こだわりの冷やし中華もあります。全ての商品に、「国府田 手なえうどん あらい」のロゴが入っています。

Information

有限会社 新井製麺所
住所 茨城県筑西市国府田1254−2
お問い合わせ TEL:0296-22-3075
営業時間 9:00〜15:00(売店)
11:00〜2:00L.O.(レストラン)
定休日 水曜
新井製麺所