「むらさきはまだか」。その昔江戸城では、土浦から醤油が届くのを待ちかねて、奥女中たちがこんな風に言い交していたとか。「むらさき」とは、醤油を表す異称ですが、紫峰・筑波山から由来した、土浦の醤油の代名詞という説もあります。土浦の醤油の歴史を紐解けば、そんな「むらさき」の語源も、俄然真実味を帯びてきます。土浦は、筑波山のふもとで良質な小麦、大豆がとれたことから、野田、銚子と並び、関東の醤油の三大醸造地として隆盛を極めていました。特に土浦は幕府を大のお得意とし、ほぼ独占状態。今回訪問した柴沼醤油醸造株式会社は、創業なんと元禄元年(1688年)、綱吉が5代将軍になった年にスタートし、以来320年以上もの長きにわたり、土浦の地で醤油を作り続けています。

 

お常陸ができるまで!

海外からの引き合いも

同社のエース、生醤油「お常陸」がこのほど、平成23年度優良ふるさと食品中央コンクールでの農林水産大臣賞を受賞しました。伝統の力と、若き後継者、取締役製造本部長・柴沼秀篤さんの吹き込んだ新風の成果です。茨城県初の快挙で、栄誉もさることながら、世界的な評価も高まり、オーストラリアや香港など海外企業からの引き合いも次々に舞い込んでいます。

美しさ、ふくよかな香りに驚嘆の声

海外を飛び回りながら、一方で秀篤さんが力を入れてきたのが、消費者一人ひとりに同社の商品を理解してもらうための工場見学です。月間300人から400人が訪れる見学会ですが、必ず18代当主の秀篤さん自身が、説明に立ちます。参加者は各工程を自分の目で見、最後に搾りたて生醤油の味見をすると、透明感のある美しい色、ふくよかな香りに、しばしば驚嘆の声を上げます。

新技術により生まれた生醤油

見学者のもう一つの驚きはその甘さです。原料の茨城県産大豆と小麦に、「伯方の塩」を仕込み時に加え、明治初期からの菌が住み着くもろみ蔵で約1年、ゆっくりと熟成させます。時間と手間が生み出した、まろやかな甘さを大切にするために、 そこからは何も加えません。セラミック濾過による除菌処理などの新技術により、加熱殺菌をしないことも、甘い味わいを生む秘訣です。

 

NK缶と呼ばれる装置で、回転しながら大豆を蒸します。

小麦を炒り、蒸した大豆と5対5で混ぜ合わせます。

麹室です。種麹菌を混合し3日間で醤油麹になります。

食塩水を加え木桶が並ぶもろみ蔵に仕込み、寝かせます。

濾布で何層ももろみを重ね、圧搾して醤油を絞り出します。

絞りたての生醤油は、透明感が際立っています。

 

ここが匠の技!

秀篤さんが、サラリーマンを経て、柴沼醤油を引き継いだのは3年前。実は高校生ぐらいまでは「絶対醤油屋にはなるもんか」と思っていたのだそうです。「占いとかは全然信じないタイプですが、結局こうなったのは伝統の持つ魔力みたいなものかな」。続けてきたことを漫然と続けていくのではなく、お客様に喜ばれる商品を作る力を伝統の中に見出したい—出身校の東京農業大学醸造科学科の先輩や後輩、異業種で開発トップを務めていた友人を呼び集め、ブレーン集団を形成。1年ほどで改革を軌道に乗せました。

「おいしいという感覚は難しい」と話す秀篤さん。だからこそ、違いを伝え、伝わった方々とつながりたいと考えています。手作りのおいしさは、心を豊かにする、これこそ変わらない信念です。

 

柴沼醤油醸造 アラカルト

左から、北海道道南産がごめ昆布、たまねぎ、ゆず皮などを加え、素材にかけたり、和えたりするだけで一皿できてしまう「うまとろだれ」。紫峰醤油から造られた浅漬の素「あわ漬」。だしやみりんを加え、妥協のない板前さんの味を作り上げた独自の醤油「紫峰」。百年木桶仕込生醤油「お常陸」。酵母菌がもろみの中で発酵、熟成を繰り返すことで生まれる、独特の旨味、コク味、風味が味わえる「紫峰の滴」。同社の自慢のラインナップです。

Information

柴沼醤油醸造株式会社
住所  茨城県土浦市虫掛374
お問い合わせ TEL:029-821-2400
柴沼醤油醸造

 

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